03理由

ココからは文章のみになると思います。

レンの家の門前にリクが運転する車が停まる。助手席にはジュンが乗っている。豪奢な門からは奥へと続く道が見えるだけで、屋敷の姿はない。正門横の通用口から門番の男が現れて用件を尋ねた。レンに会いに来た事と、レンには電話で連絡済みだとリクが答えると男が門を開いた。「分かれ道まで来たら左側へ進んで下さい」男に言われるまま木立に挟まれた道を奥へと進む。「うわー。広いなあ。これが庭?」窓から顔を出して辺りを見回すジュン。やがて道が左右に分かれる分岐点に来て、言われた通り左側へ進んだ。芝生が広がる大地を変わった種類の動物達が歩いたりしている。遠くには林や小川も見える。「向こうは何があんのかな」右側の道を指差す。「レンの両親の家だろ。レンは去年の成人祝いに例の当主から家を贈られたそうだからな。あの動物達は多分護衛用だ」「何かスケールが違うなあ」と言って、ジュンはリクへと視線を移す。「ていうかリク、何気によく知ってるよね?やっぱ本当は好きだとか?」「違う。有名だからな。シヅキ当主のレン贔屓は。パーティーとか行くと嫌でも耳に入って来るだけだ」いわゆる大富豪といわれる人物ともなると私生活まであれこれ噂になるものだ。「リクもお坊ちゃんだったっけ。造船会社社長のご子息様だもんなー」そんな事を話しているとレンの屋敷が見えて来た。「眩し」ジュンが目を細める。壁に埋め込まれた色とりどりの宝石が光を反射させている。まるで宝石箱の様な屋敷である。車を停めて玄関ドアの前に立つとタイミング良くドアが開かれた。執事であろう白髪の男が2人を出迎え、側に控えていた少年に応接室へ通すように申し付けた。案内された部屋で待っているとレンが姿を現した。「急に押し掛けて悪いな」と言うリクに微笑むレン。「ううん。来ると思ってたから。久しぶりだね」「ああ。まさかこんな形で再会するとはな」「本当に、オレもびっくりした。ご両親はお元気?」「変わりないよ。レンの事を話したら会いたがるだろうな」「うれしい。オレもまた会いたい。リクのお母様のパイがまた食べたいな」「ああ、母に伝えておくよ」久しぶりの再会を喜ぶ旧友の如く会話する2人を見ながら、その容姿におおよそ似つかわしくないレンの一人称を聞いてジュンが少し驚いた顔をしていた。ふとレンがそのジュンに視線を移す。「確か、C地区代表の」「ジュンでーす。ヨロシクー」笑顔で挨拶をする。「よろしく」ソファに座るように勧め、自分も腰掛ける。するとドアが開いてティーセットを乗せたワゴンを押してあのメイド達が入って来た。3人の前にお茶と菓子を出した後はレンの後ろに控える。「しかし、本当に意外だな。レンはこういう事には興味がないと思ってたから」リクが切り出した。「ない。そう言ったよ?」茶の香りを味わっていたレンが答える。「すまない、そうだった。言っていたな」と返すリクの顔をじっと見つめる。「信じられない?オレの言った事」「まさか。ただ、らしくない、と思ったんだ」優しい笑みを浮かべる。「あのレンが、興味のない事に自分から関わるなんてさ」背凭れに背を預け、足を組み替えるレン。ゆったりとした服の裾からすらりと伸びた白い脚に自然とジュンの視線が向けられる。「だよね。オレも本当に嫌なんだけどさ」「じゃあ何で?」「平和の為」「平、和?」思わず顔を見合わせるリクとジュン。「そ」チラリとレンが視線を向けると後ろに立っているメイドの1人、りのが説明を始めた。「A地区がお2人のC、D地区を含め4つの地区と隣り合わせなのはご存知ですね?」頷く2人。「ではここA地区が他の地区と比べて抗争の場になる機会が多いのもご存知だと思います」A地区が関わらない抗争でも、A地区で他地区同士が激突する事も多々ある。「そのせいで他の住民の方同様レン様も被害を受けておられるのです」「被害って?」恐る恐る尋ねるジュン。「レン様の通られる道が通行止めになった事が3回道路脇での争い、怒声等の騒音で車中にて通話中だった所を邪魔された事が1回、レン様行き付けの店等が早仕舞いした事が5回等々レン様の日常生活に多大な悪影響を及ぼしております」肘掛けに片肘をつき、掌に頬を乗せたレンが言葉を繋ぐ。「平和な生活を守るにはどうすればいいか考えて、争い自体なくしちゃえばいいんだって気が付いたんだ」「それで代表になって中立宣言ってわけか」「そ。嫌な事でもやらなきゃならない時ってあるんだよね」「ご立派ですレン様」目頭を押さえるりの。「すげぇ」ぼそりとジュンが洩らす。「そうか。よく分かったよ。ありがとう」言いながらリクが立ち上がる。「どういたしまして」ヒラヒラと手を振る。リクに続いて立ち上がったジュンはドアへ向かわずにレンの側へ歩み寄った。携帯電話を取り出して「いいかな?」と聞いた。連絡先を交換したいというのだ。メイド3人娘の目が鋭く光り。慌てて説明するジュン。「いや、代表同士は皆連絡取り合えるようにしてるんだよね。会の事とかあるしさ」レンは少しの間、その顔を見つめ「いいよ」と答えて指先を動かした。それを受けて渋々、なのが薄い透明のカードを差し出した。嬉しそうにそれを受け取るジュン。「ありがとう」手を差し出してレンと握手をしようとしたが、なのに阻まれる。「お帰りはあちらへ」と部屋から追い立てられた。車に乗り込んだジュンは、いそいそと携帯電話にカードを翳す。情報を読み取らせたカードは光となって分散して消えいた。「やった。連絡先ゲット♪」それを横目に見ながらエンジンをかけるリクが「もう1度、言うが妙な気は起こさない方が身の為だぞ」と冷ややかに言った。しかしジュンは笑って返す。「何だよ妙な気ってさ~。純粋にお近づきになりたいだけだって」溜め息を吐くリク。「まあいい。他の奴らにはお前から言っておいてくれ」「えー。何で俺がー?」「連れてきてやったんだからそれくらい働け」と言うとまだ文句を言っているジュンを無視して車を発進させた。

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