この話の絵は仕上がっていないので、文のみです。
ソウが倒れてから8日目、ようやくアキが完治を認めた。こんなにも長い間、病人扱いされた事はなかったので健康である事の有難さを実感した。
「せやけど、仕事は明日からにしときや?」朝食を食べながらアキに言われる。
「分かってるよ」昨日も言われていたので、行くつもりはなかった。
「アキは?今日どうするんだ?」もう看病は必要ない、いくら有給がたまっていたとはいえ5日も休むと仕事に支障を来すのではと思った。
「ソウは?俺に居って欲しいか?」
「そりゃ居て欲しいよ」気持ちが通じ合って間もない相手と離れたいなどと思う訳がない。
「ほな、今日はソウと居る」あっさりと言ったアキに「いいのか?」と心配そうに聞く。
「ええんや。会社のヤツらにはソウが治るまでは来んて言うてある」
「そうか」会社の人達には申し訳ないと思ったが、アキが側に居てくれるのは嬉しい。ソウの表情の変化を見たアキは「ホンマ可愛いらしなあ」としみじみ言った。最初は自分をかわいいなんて言うアキはどこかおかしいのだと思っていた。それが、今となってはこそばゆいけれども悪い気はしない、ふわふわした気分にさせられるのだ。
「今日は1日ゆっくりしよか」
「そうだな」ということで、家で寛ぐ事にした2人は朝食後、リビングで映画を見ていた。何故かホラー映画を。それはソウの希望だったのだが・・・。
「アカン、アカンて。もお嫌やわ。何やねん」言いながら隣のソウにしがみつくアキ、怖い物なしに見えて意外にもホラー物が苦手らしい。その様子が子供みたいで可愛いと思ったソウはヨシヨシと背中をさすってやった。
「アキってホラー苦手なんだな。何か意外だよ」静かなシーンの時にソウが言った。
「しゃあないやん。背中寒なるねん」口を尖らせて言うアキは年相応に年下に見えた。
「でもさ、アキも苦手な物があるって分かってちょっと嬉しいかな」
「何でや?」
「俺が守ってあげられるだろ?いつもアキにはしてもらってばかりだからさ、何か1つくらいは俺がしてあげられる事があってもいいと思ってさ」
「ソウ・・何やそれ。カッコええやん。男前や」と感動するアキだったが、映画が恐怖シーンに差し掛かった為に感動は恐怖に変わった。
「なぁ、もう終りにせえへん?ちゃうヤツ見ようや」
「ダメだよ。最後まで見たいし。こうしててあげるからさ」アキをぎゅっと抱き締めて背中を撫でる。実は嬉しい理由にはもう1つある。アキに対して主導権を握れる滅多にない機会でもあるからだ。
たまには、こういうのも悪くないよな。などと思う。 そうして映画を見終わった後アキは拗ねていた。
「いけずや。ソウがいけずした」
「してないよ。最後まで見たかったんだ。一緒に見てくれてありがとう」笑顔で言ったソウはアキの額に口付けた。
「何やねんそのイケメンぶりは。そらモテるわな。俺が女やったら抱かれたいわ」とぼやく。その言葉にソウはやっぱりなのか?と思った。
「あのさ」
「?何」
「女じゃないと、そう思わないんだよな?」
「何が?」
「抱かれたいっていうの・・・」
「当たり前やろ」
「・・うん。そうなんだろうけどさ」アキ自身も何度か言っていたし、ソウにしてもアキが抱かれる側に回るようには思えないのだが。こうして恋人という関係になるといずれは迎えるであろうその時の事を意識せずにいるのは難しい。アキが抱く側なら自分は抱かれる側という事になる。しかし、ソウにはやはり未だに自分が抱かれるというのが想像出来なかった。
キスは気持ちがいい。けどその先は?ソウは正直にその戸惑いを伝えた。
「キスするのは好きだよ?気持ちいいし・・けどそこから先が俺、やっぱり想像出来ないんだ」
「そうやな。今はそんなん無理に考えんでもええやん。俺、ソウが嫌な事は絶対にせんし」ヨシヨシとソウの頭を撫でる。
「違うんだ。嫌とかじゃなくて」ふわりと抱き締められる。
「分かってるて。何も焦らんでええやん。キス好きやったら今はキス飽きるまでしたらええやん。な?」優しい声と眼差しに胸が熱くなる。
「でも、それじゃあアキが」同じ男として、アキがどれ程の意志の強さで自分の欲求を抑え込んでいるのかと思うと身につまされるものがある。
「言うたやろ?ソウが1番やて。ソウが好きな事だけして喜んでくれたら俺はそれで十分や」
「アキ・・」
アキの方が自分よりも何十倍も男前ではないか、クラリと目眩の様な感覚に襲われて思わず「キス、したい」とねだってしまった。
「ええよ」言葉と共にアキの顔が近付いて来て唇が重ねられる。ソウの方から口を開いてアキの舌を誘い出す。アキもそれに応え、舌を絡め合う。今日は何も止めるものがない。濃厚で、長いキスはソウが求められるままに続けられる。
「っあ・・アキ。もっと・・」離したくない、とアキの背中に手を回す。アキの手もソウの背中を撫でていた。
体が熱い。けど、もっと欲しい。
夢中でキスを貪るソウは体の奥が疼き始めても構わなかった。自分の体の変化に気付いたのは、後ろにゆっくりと押し倒された時だった。ジーンズの前がきつく張り詰めている。
マジで?勃ってる。
一瞬で赤面した。ソウの様子に気付いたアキがキスを止めた。
「どないしたんや?」額にかかる髪を掻き上げる。
「ちょっと・・その・・」言い辛そうなソウの顔を見て体を起こしたアキの目にソウの下半身が入る。
「そないに気持ち良ようなってくれたんやな」自分とのキスでソウが感じた事にアキは満足そうだった。
「触ってもええ?」
「えっ!?さ、触る?」頷くアキにソウは焦る。
「そのままやったら苦しいやろ?」
「でも・・・」戸惑うソウの耳元に口を寄せて囁く。
「なあ・・触らして?もっとチュウしたるから」中心を疼かせる甘い低音に、観念した様に目を閉じて「いいよ」と小さな声で返事をした。再び唇が重ねられる。ソウがもう1度、キスに夢中になるまで待ってからアキは手をソウの下腹部へと這わせた。ジーンズの上から張り詰めた股間のモノを撫でるとビクンとソウの体が反応する。アキの背中に回された手の指先に力が入った。アキは慣らすようにして、何度も指先と掌でソコを撫でる。焦れったいその動きに堪らず腰を捩る。そこで初めてボタンに指を掛けた。片手で器用にそれを外してしまうとジッパーをゆっくりと下ろす。ソウの体が強張るのを解く様に、甘いキスを仕掛けながらそれを下ろしてしまうとソウの雄が下着を押し上げていた。形を確かめる様に、アキの指が輪郭を辿る。薄い布地の上から触れられ、感度が増す。アキの指が動くのに合わせてビクビクと雄が震え 、それをアキの掌がそっと包み込む。
「ぁっ」ソウが小さな声で喘いだ。
「・・見てもええ?」そろりと撫でながらアキが聞いてくる。
「い、やぁ」ソウは首を横に振った。ゆっくり上下に扱かれ始めると縋る様にアキの背中をまさぐった。
「なあ、見せてや」人差し指で先端の割れ目をなぞられ、顎を仰け反らせた。
「ぃやだっ」
「ホンマに?」手の動きを止めたアキが言う。完全に反り勃った雄は下着の中で窮屈そうに主張していた。「この子は外へ出たい言うてるで?」
「・・恥ずかしいよ」両手で顔を覆ったソウが泣き出しそうな声で言う。
「そしたら、やめよか?このままで下着濡らしてまうんも恥ずかしやろ?」
「いやだ」こんな中途半端な状態で放り出されるのは辛い。いっそ自分で抜くという方法もあるのだが、ソウは気付かない。
「どっちが?」
「両方・・・」
「ほな、どうする?」
「ぃぃょ」消え入りそうな声で言った。アキは目を細めてソウに口付けた後、体を起こす。カウチに脚を広げさせて座らせて自分はその前へ跪く。下着をずらせて押し付けられていた雄を解放してやった。
「ヤらしい形してるなぁ」天を向いて脈打つそれを右手でやんわりと握り込む。
「いや・・」直接触れられるその感触に体を震わせる。
「そんな事、言わないでくれ」しかしアキは止めなかった。
「今までぎょうさん女の子泣かして来たんやろ?悪い子や」グリグリと先端を親指で刺激されると先走りの滴が溢れる。
「はっ」目を開く事が出来ずに背凭れに上体を預け、手で顔を覆っていた。
「もうこんなに溢れさせて。ガマン出来へんのか?」溢れる先走りを塗り付けるようにして軽く扱く。
「ああ・・」溜め息の様な喘ぎが洩れる。
「ヤらしい子や」アキは扱くのを止めて撫でたりなぞったりして弄ぶ。その焦らされる様な快感に身を捩らせる。
「アキ」顔を覆っていた手を下ろして自分の雄を握っているアキの手をさすった。
「アキ・・」アキの顔を見る。アキは笑みを浮かべている。
「ん?どないしたん?」
「イジワルしないでくれよ」
「してへんて。せやったらどないして欲しい?」
「・・・─」言うのを躊躇う。が、ここまで晒しておいて今更の様な気もする。
「イかせて」潤んだ瞳でアキに請う。
「仰せのままに、や」立ち上がったアキはソウの隣に腰掛け、キスをしながら雄を扱き始める。女の子にされるよりも的確にイイ所を押さえてくるアキの手技は難なくソウを絶頂へと導いていく。
「もう悪さは出来んで?これからは俺がこうやって可愛がったるからな」耳元で囁かれるのと同時に絶頂を迎える。放たれた白濁を掌で受け止めたアキは「濃いの出たやん」ペロリと舐めた。
肩で息をしているソウが「そんなの、なめ・・るなよ」と眉根を寄せるが「何も汚い事あらへん」と言って舐め取ってしまう。そしてソウの雄を綺麗に拭いてやると服の乱れも整えてやった。
「どないやった?」
「・・・気持ち良かったよ」恥ずかしさやらでバツの悪そうに言った。
「ほなキスよりイッコ先進んだやん」笑顔で言われて、確かに、と思う。
「な?ちょっとずつで大丈夫や」ポンポンと頭を叩かれてソウも笑顔で頷いた。
その後はソウが苦手なジャンルも見ようとアキが言って何本か映画を見た。スプラッターで少々気分が悪くなったが結果的には特に苦手なジャンルはないようだった。アキは残念そうに「俺もソウにしがみついて来て欲しいわ」とぼやいた。ふと時計を見るともう夕方になっていた。
「晩メシは材料買いに行かな足らんな」と食材をチェックしたアキが言った。
「買い物行くなら俺もついて行くよ」手伝いたいというよりも一緒に居たいという動機でソウが言う。
「ええよ。ほな一緒に行こ」離れたくないのはアキも同じだ。2人で近くの店まで歩いて出掛ける。ただ一緒に歩いているだけでも楽しいなんて、自分でも浮かれすぎているのが分かる。手を繋ぎたくなってそっとアキの手に触れるとぎゅっと握られて嬉しそうに微笑む。見ているだけであてられそうなラブラブぶりである。店に着いて買い物をしていても当然それは変わらず、試食品が置いてある所を通った時にそれを1つ取ったアキが「食べてみ?」とソウの口元へ。ソウも特に躊躇いもせずにパクリと食べた。
「ウマイか?」
「ん」とソウが頷くと「ほな、買おか」とその商品をカゴに入れた。
そんな2人が平日の夕方、混雑している店の中で目立ってしまっても仕方がないだろう。遠慮のない視線が向けられ、通りすぎて行く。当然アキは気にしないし、ソウはただアキだけを見ていたので気付かない。そうして買い物を終えた帰り道、買った品を入れた袋を1つずつ持って空いた手を繋いで歩く。
「買い物くらいやったらええけど、もっと人多いとこは気ぃ付けなアカンな」
「何を?」アキを見上げる。
「ソウが妙なヤツに目ぇ付けられんように、や。皆見てたで?ソウの事」アキの言葉にキョトンとする。
「違うよ。アキがカッコいいからだよ」アキが周囲の視線を集めるのは知っている。
「それもあるやろけど」謙遜も否定はしないのがアキらしい。
「今のソウは魅力倍増中やからな。前以上に可愛いらしいし綺麗やしでキラキラしとる」ソウ自身はその変化に気付いていないが、アキの言う通り今のソウは綺麗だった。元々の顔の造形も美形と言われる部類だが、それに加え内側から溢れるような輝きが感じられる。正に愛の力というやつだろう。
「だとしたら、アキのおかげだよ。アキが俺を好きでいてくれるから」ソウが微笑む。
「その顔でそんなん言われたらたまらんで」ちょうど信号待ちで立ち止まった時に顔を寄せてキスをされ、うっとりと目を閉じる。唇を離したアキは「ホンマ、めちゃくちゃ可愛いらしいわ」と頬にもチュッチュッとキスをした。それからも何度か往来でキスをして、漸く家に帰って来た。料理を作り始めるアキをダイニングから眺める。手際の良い動きに見とれていた。
あの手が、俺に触れると・・どうしようもなく熱くなる。あの力強い腕で抱き締められたいし、厚い胸や逞しい背中に触りたい。
自然とそんな事を考えている自分に気付き、恥ずかしくなる。
朝、あんなにキスしてオマケにイカせてもらったのに。もうこんな事考えるなんて・・・。アキにガマンさせてるクセに。
不埒な考えを吹き飛ばす様にブルブルと頭を振ったが中々にその考えは吹き飛ばせなかった。食事を終え、風呂にも入り「明日は久しぶりの仕事やからな。早目に寝よか」と立ち上がったアキに嫌だと後ろから抱き付いた。
「どないしたんや?」驚いたアキは後ろを見るがソウの顔は見えない。
「こっちおいで」前に来る様に促すが、ソウは首を振る。
「俺。情けないよ」
「?何がや」
「こんなに・・ガマン出来ないなんて」その言葉でソウの言わんとする所を理解したアキは優しく言った。
「ソウも俺と同じくらい欲しがってくれてるんやな。嬉しいわ」
「でも、アキはガマンしてくれてるのに」グイ、と無理矢理向きを変えてソウと向き合う。
「そら年季の違いや。気にする方がおかしい」ヨシヨシと頭を撫でる。
「こういうの抑えるのに年季なんて関係ないだろ?」確かにソウの言う事ももっともなのだがアキは取り合わない。
「とにかく、ソウが欲しいんやったら、いつでも何回でもそう言うたらええんや」
「いやだよ・・そんなの。俺ばっかりの勝手押し付けるなんて」
「押し付けちゃうやん。俺がそうしたいんやて」
「アキは苦しくないのか?」
「まあ下半身に来ん、言うたら嘘になるけど。それよりもソウが気持ちええて言うてくれる事の方が上回ってまうんや」献身と言うにも度を超している。実際、前にソウに言われた様にどこかおかしいのかもしれないがそんな事すらアキにはどうでも良いのだ。ソウもそれをはっきりとではないが感じ取った。
「・・じゃあ、アキは俺がガマンしないでして欲しいって言った方が嬉しいのか?」
「そうやで?何回も言うてるやん」真っ直ぐに自分を見つめてくるアキの瞳に偽りの曇りはない。
ふう、と息を吐くと体の力が抜けた。アキの胸に顔を埋めて「アキ、キスして?」とねだった。
「それだけでええんか?」背中をアキの手が這い上がった。ソウの口から吐息が洩れる。
「もっと気持ち良くして欲しい」
「ええよ」アキの唇が降りてくる。
そうしてソウは本日2度目の射精を迎えさせられる。しかも今度はアキの口の中へ。
「手はイケたから、今度は口でも試そか」アキのベッドに寝かされ、足を大きく開かされたソウの股間の雄を扱きながらアキが言った。
「はっ・・そんな、ぁ」いいのか悪いのか、返事が出来ない。
「嫌やったら言うてな?」アキがゆっくり顔を近づける。
「アキっ」顔を起こして下腹部を見るとアキの口の中に自分の陰茎が入っていくのが見えた。温かい口内に包まれる。久しぶりのその感覚に体を震わせる。アキの舌が陰茎に這わされ、緩く吸われた。
「ぁっ・・・」ソウの手がアキの頭に伸びて髪を掻き乱した。それを催促だと受け取ったアキが舌と口でソウの雄を愛撫する。手でされた時よりも早く高みに上り詰め、絶頂を迎えた。
「んあっ・・イクっ」知らず腰をアキの顔に押し付け、口内に精を放った。アキはそれを1滴も残さずに吸い、飲み込んでしまう。力が抜けてくったりと四肢を投げ出すソウの、精を解放して小さくなった陰茎を舐めてから口を離す。ペロリと自分の唇を舐めて「ごちそうさん、や」と笑みを浮かべた。
「口の方がええか?」うっすらと汗をかいた額に張り付く前髪をアキの指が払う。
「・・どっちも、気持ちいいよ」乱れた呼吸を整えようとする合間にソウが答えた。
「そうか?ならええけど」愛しそうにソウを見つめる。
「もう眠れそうか?」
「うん」
「それやったらもう眠り?」額にお休みのキスをしたアキはすぐ戻ると言って部屋を出る。ソウが最優先なのは事実だが、先にも言った様にアキの体も反応しない訳ではない。
「それにしても今日は可愛いすぎやな」苦笑して1人、トイレで昂った自身の雄を解放してやる。その後、何食わぬ顔をしてソウの元へと戻った。既にうとうとし始めていたソウはアキへ腕を伸ばして隣へ来るように誘った。その隣に潜り込んだアキは擦り寄ってくる体を抱き締めてうっとりと囁く。「おやすみ」
翌日からソウもアキも職場復帰し、普段通りの生活に戻った。ソウがアキと付き合い始めた事は、自身が言うよりも前にじんやナオに見抜かれた。
「も、すぐ分かりますって。別人になって帰って来たのかと思いましたよー」とナオが言えば「幸せオーラで一杯だな。いいねえ、若いって」とじんに言われた。
「まあでも良かったっすよ。体も良くなって」心配してくれていたのだろう、ナオの言葉にソウは頭を下げた。
「心配掛けてすまない。じんサンも、すいませんでした」その肩をポンポンとじんが叩く。
「元気になったからいいじゃねえか。さ、仕事すんぞ」
「はい」仕事モードに切り替わったソウはナオと共にじんの後に続く。
昼休みにはツカサとレンにとりあえずの一報を入れ、また今度ゆっくり話をしようと言った。復帰初日を終えて帰路に着く。朝は送ってくれたが、帰りの約束はしていない。久しぶりに自分の家へ帰ろうかと思いつつも自然とアキの家の方へと足が向く。前はアキの居ない家に居ると寂しくなると思ったが、今は少しでも早くアキに会えるなら家で待っていたいと思う。別れてから10時間くらいしか経っていないのに、今すぐにでも会いたい。気分は恋する乙女である。
こうして平日はソウが仕事帰りにアキの家へ寄る、というのがここ数日のパターンになっていた。同じく、ソウがキスを欲しがって、アキがイカせてやるというのも。
アキに与えられる快感に身を任せるのはとても気持ちが良い。女の子を抱いていた頃にはこの快感は得られなかった。そして際限なく欲しくなるという事も経験した事がなかった。はしたないと分かっていても、アキが受け入れて与えてくれるからもうそれを抑えようとはしなかった。けれども、どうしてもっと、もっとと欲しくなるのか。その理由を考えていた。
ある日の夜、いつもの様にソウを気持ち良く解放してやった後アキは部屋を出て行く。少しして、喉が渇いてきたソウも部屋を出て階下へ。何となくアキの姿を探して辺りを見たソウは廊下の奥の方から伸びるぼんやりとした光に気付く。当然そこにはアキが居る筈なのでそちらへ行く。トイレのドアが少し開いていてそこから光が洩れていたのだ。トイレか、と思いキッチンへ行こうとしたが苦しそうなアキの息遣いが聞こえてそっと近付く。ドアの隙間からアキの後ろ姿が見えた。せわしなく動かしている手の動きとその息遣いで何をしているのかすぐに分かった。見てはいけないものを見てしまった子供の様に足音を立てず、部屋まで戻り布団を被った。ドキドキする胸を押さえる。チラリと見えたアキの横顔は切なそうに目を閉じられていて、そこには色艶が漂っていた。
いつも、1人であんな風に?俺に気付かせないように?
ドキドキしていた胸が締め付けられる。 俺の事、思いながらしてくれてるんだよな?
かぁっと頬が熱くなる。そこへアキが戻って来た。ソウが眠っていると思ったのか、そっと隣へ入って来た。くるりと向きを変えて、その胸元へ抱き付いた。
「何や。まだ寝てなかったんか」優しく頭を撫でられる。
「アキ・・」
「ん?」
「好きだよ」
「俺も好きやで」髪に口付けられた。
「うん」
「おやすみ」
「おやすみ」目を閉じたソウはアキの鼓動を聞きながら思う。
分かった。何であんなに欲しいのか。アキと一緒に気持ち良くなりたいんだ。もっとアキを感じたいんだ。アキと1つになりたいんだ。
翌日、いつもの様に仕事モードになれずにソワソワしながら仕事をする。いつもは気が付いたら時間が経っているのに今日は中々経たなかった。終業のベルが鳴り響くと、ナオに片付けを頼んで駆け足で走り去って行った。バスや列車を待つ時間も惜しくてタクシーを止めてアキの家へ。アキはまだ帰っていない。仕事が忙しいので9時頃になるだろう。急いで帰っては来たものの、特にやる事はない。現場によっては汗だくだったり土まみれだったりする。仕事場にもシャワー室が有るので帰る前に一応は体を洗うのだが、仕事から帰ると1番最初にするのはシャワーを浴びるか風呂に入る事だ。アキの家でも同じようにさせてもらっているので仕事着を脱いでシャワーを浴びた。その後はテレビを見たり、雑誌を読んだりしてみたが集中出来ずにすぐに止めた。カウチの上でだらしなく寝転がって時計の針を見ているといつの間にかうとうとしていたようで、目を開くと部屋の中は真っ暗だった。のそりと起き上がってぼーっとしていると窓の外でアキの車の排気音が聞こえた。勢い良く立ち上がって玄関へ。ドアを開け、外へ出るとアキが車から下りて来る所だった。裸足のまま駆け寄って抱き付いた。
「おかえり」
「ただいま。来とったんやな。電気点いてないから居らんのかと思た」ヒョイとソウを抱き上げて中へ入る。足の裏を軽く払ってから廊下にソウを下ろし、灯りを点けたアキが微笑む。「お昼寝しとったんか」寝癖のついた髪を優しく撫でる。頷いたソウはアキの体を抱き締めた。
「どないしたんや?」やたらと引っ付いてくるソウの背中を撫でながら聞く。
「怖い夢でも見たんか?」
「見てないよ」上目遣いにアキを見る。
「キスして欲しい」
「ええよ。けどお腹空いてないんか?」もう9時前だ。
「空いてない。キスがいい」
「わかった。おいで」再びソウを抱き上げるとキスをしながら廊下を進む。
「どこでしたい?」階段の前で聞かれる。
「アキの部屋がいい」返事代わりのキスをしたアキは階段を登り自分の部屋へ。ベッドにソウを寝かせてキスを深めていく。するりとソウの下肢へ伸ばされたアキの手をソウが掴む。アキは唇を離してソウを見た。
「俺、アキと一緒に気持ち良くなりたい」
「せやから今してる所やん」アキは笑ってソウの頬に口付ける。
「違うよ」間近にあるアキの両頬に手を添えて言う。
「アキと1つになりたいんだ」
「─・・・それがどういう事かホンマに分かってるか?」諭す様に言われてソウはキッとアキを見据えた。
「分かってるよ」しかしアキは納得がいかない様で体を起こし、「何でまた急にそない思たんや・・」と溜め息混じりに言った。
「しょうがないだろ?昨日気が付いたんだから」ソウも起き上がって、胡座をかいた。
「何でいつも欲しくて、もっともっとって思うんだろうって考えてたんだ。それで昨日たまたま」チラリとアキを見て申し訳なさそうに言う。「トイレでアキがしてる所見ちゃったんだ」ゴメンと手を合わせる。
「別にええよ。で?」アキは気にならないらしい。
「それで、もっとって思うのは、アキも一緒じゃないからだって。1人でするとかしてもらうとかじゃなくてさ、2人で気持ち良くなりたいんだ」
「ソウ」
「アキを感じたい。アキにも俺を感じて欲しい」
「参ったわ・・そこまで言われたら敵わんやん」ふわりとソウを抱き締める。ソウは嬉しそうに笑って抱き締め返した。
「けど、いきなり無理な事はせえへんで?ちゃんと慣らしてからや」
「わかった」と答えたソウのお腹が鳴るのを聞いてアキは笑みを浮かべた。
「先、腹ごしらえしよか」ソウを抱き上げて部屋を出た。
時間が遅い事もあって、夕食は簡単な物で済ませた。片付けをしようとしたソウを後ろから抱き締めるアキ。
「今日はせんでもええ。それより一緒に風呂入ろ?」耳元で囁いて耳朶を甘噛みした。
「ん・・」小さく頷く。
風呂ではじゃれ合いながら互いの体を洗ってやる。2人で湯に浸かりながらソウが聞いた。
「アキってさ・・・ルイさんとした事あるのか?」
「はあ?ルイ?」何故ここにルイの名が出てくるのか分からないと言いたげなアキ。
「だって、よく知ってるみたいだったからさ、アキの体とか・・」不意にこの間の会話の中でルイが言っていた事を思い出したのだ。
「何言うてたんや、アイツ」
「え。激しくてスタミナが半端なくて・・・極太って」赤くなりながらルイの言っていた事を口にした。アキが舌打ちする。
「ホンマに要らんことばっかり言いよるな。アイツとなんか寝てへんで」
「そうなんだ」ホッとする。
「俺と寝た事ある子らと知り合いやったから色々聞いてたんやろ」ソウにも過去の相手がいるのでお互い様なのだが、顔も知らない相手と会って話までした相手では気持ちの上で違って来る。
「そんなん、思い出したんは今からセックスするからか?」ニヤリと笑うアキが聞く。
「分かってるくせに聞くなよ」やんわりとアキを睨む。
「ええやん。聞きたいんや」ソウの肩を撫でて首筋に口付ける。
「そうだよ」むうっと唇を結ぶ。満足そうに笑うアキがソウを抱き上げて風呂から上がる。さっさと自分の体を拭いて腰にタオルを巻き付けたアキはドライヤーでソウの髪を乾かしてやる。そのついでで自分の髪も軽く乾かすとソウにバスローブを羽織らせて抱き上げ、部屋まで連れて行く。
ベッドの上に座らせたソウに顔を寄せて口付けた。次第に深くなっていくキスと共にゆっくりと押し倒す。羽織っただけのバスローブは既にはだけている。晒された素肌にアキの指先が触れ、そろりと肌の上を這わし始めた。敏感な所に触れられるとピクリと反応を返す。腰骨から上へと辿らせた指先が胸まで来て、乳首を摘んだ。
「っ・・」思わず身を捩る。
「痛いか?」
「ちょっと」触られ慣れていないそこは少しの刺激でもヒリヒリしていた。
「そらアカンやん」と言ったアキはソウの唇を啄んでから胸元へ顔を寄せた。ヒリヒリしている乳首を優しく舐め、口に含んだ。指で触られるのと違い、痛くはなかった。吸ったり舌で転がすようにした後、もう片方へと移り同じ様に愛撫した。
「痛なくなったか?」顔を上げて聞く。ソウが大丈夫だと頷くと乳首には触れず乳輪に添うように指で円を描きながら嬉しそうに言った。
「ええなあ。開発しがいがあるわ。ココでも感じられるようにしたるからな?」
「開発って・・・」本当にそうなるのかは別として、アキの手で変えられるのなら悪くないと思う。
「せやけど今日はええとこ探さなな?」とそれ以上は乳首には触れなかった。そして触れてない所がないくらいにアキの手や舌や唇がソウの肌を這い、反応を返す場所を探った。
「はぁっ」身体中が熱くて燃えているみたいだった。やがてアキの手が既にいきり勃ったソウの肉茎へ辿り着く。
「もうこんななって」アキの指がいやらしい動きで撫で回した。
「あぁ・・」顎を反らせてシーツを掻く。
「1回、ラクにしたるな?」と言ったアキはソウの肉茎を口に含み、舌と指とを使って巧みに追い上げ始めた。呼吸が浅くなり、精を吐き出したいという欲求が高まっていく。背をしならせ、腰を突き出すと固く目を閉じてアキの口内に精を放つ。アキは当たり前の様にそれを飲み干してやる。そして弛緩したソウの体を腰を掴んでひっくり返した。まだ力の入らないソウが苦しくないようにクッションを顔や腹の下にあてがってやると尻を高く持ち上げ足を開かせた。こんな体勢になるのは初めてで恥ずかしくなる。
「アキ、恥ずかしいよ」アキの顔を見られずにクッションに顔を埋めた。
「痛かったら止めるから、ちょっとガマンしててや?」目の前の、尻を撫でる。
「スベスベや」と言って口付けた。
「いやだ。そんな所」
「綺麗やで?」もう1度口付けてから両手で尻の肉を左右に開かせ、その奥を晒させた。
「ダメだって・・」逃れようとして遠慮がちにモゾモゾと尻が動く。
「大人しゅうしとり」片手を前へ伸ばし、普段のサイズに縮んだ陰茎ごと玉を掴んでやんわりと揉まれて力が抜ける。片手で再び尻肉を拡げて奥を晒す。性器ではない、排泄する器官である所を見られていると思うと、恥ずかしいを通り越して泣きたくなってきた。
「綺麗な色しとるで?」と言ったアキは躊躇いもなくそこへ舌を這わせた。ビクリとソウが体を震わせる。
「ア、アキっやめてっ」前を揉まれながら後ろを舐められる。初めて尽くしの事にソウは動揺する。しかし、こうなる事を招いたのは自分がアキと1つになりたいと望んだからだと思い出し、抵抗するのを止めた。それを待っていた様に、アキの舌がソウの秘孔に差し入れられる。何とも言えない違和感をぎゅう、と目を閉じて耐える。アキは自分の唾液で十分に湿らせた後、ペロリと舐めた右手の人差し指をそこにあてがった。ビクッとソウの体が揺れるのを見て、アキが体勢を変える。ソウを後ろから抱き起こし、そのままベッドヘッドに凭れて座る。項に舌を這わせ、甘く囁く。
「ソウ、チュウして?」首を後ろへ向けてアキの唇を吸う。アキの舌が入ってきて、口内をゆっくりと這い回る。うっとりと目を閉じてキスを味わうソウの体をアキの手がまさぐる。少し勃ち上がりかけている雄を優しく包んで扱いてやる。
「ん・・ふっ」息が弾んできた頃に唇を離してもう片方の手をソウの口元へと滑らせた。人差し指で唇をなぞりながら再び囁く。
「これ、しゃぶって?」開かれたソウの口に人差し指を入れ、吸わせる。
「ええ子やなあ」優しく、甘い声がソウの耳を擽った。口内をかき混ぜる様にゆっくり動くアキの指を懸命に舌で捉えて吸う。
「上手いやん」肩にキスを落として雄を更に扱く。
「ン、ン」膝立ちになったソウの腰が揺れる。雄の昂りにソウの意識が集中するのを見計らって口内から指を引き抜く。
「よう出来たな。ご褒美や」と言ってキスで唇を塞ぎ、ソウの唾液でたっぷりと濡らされた指を悩ましげに揺れている尻の秘孔辺りへあてがった。そろりと奥へ進めて目的の場所を探り当てる。ソウの様子に注意を払いながらゆっくり、指先を押し入れる。
「あ、アキ?」ソウが体を強張らせ、不安そうに振り返る。
「大丈夫や、痛かったら止める」優しく唇を吸ってやる。ソウは自分と1つになりたいと言ってくれたが、体質的に向かない場合もある。痛がるようならその先へは進めるつもりはない。ソウが自分を求めてくれるだけで十分満たされているのだ。唇からアキの気持ちが伝わったのか、ソウは目を閉じて息を深く吸って吐いた。強張っていた体の力が抜けたのを確認してから指を奥へと進めた。舌よりも奥に入って来る事で異物感が増したが、痛くはなかった。
「痛ないか?」頷きを返す。「変な感じだけど」
「そらそうやろな。けど痛ないんやったらよかった。ほな、これは?痛ないか?」と言った後、ゆっくり抜き差しを始めた。
「ん。やっぱり変だけど・・痛くない」
「そうか。ほなソウは大丈夫なんかな。痛ぁて無理な人も居るからな」暫くの間、抜き差しを繰り返して指を抜いた。そして再び四つ這いになるように言った。恥ずかしながらもアキの言う通りになる。アキは目の前に晒された秘孔に、人差し指に加え中指もあてがう。
「さっきみたいに力抜いてな?」とソウに呼吸をさせて、2本の指をゆっくり挿入する。
「ん?あ!」ピクッと尻の肉が震える。指が増えた事により軽い圧迫感が生まれる。
「痛いか?」
「痛くない」と答えると2本の指で抜き差しされる。それも痛くはなかった。そして3本目を加えて同じように確かめると「普通は3本いけたら大丈夫やねんけどな。もうちょっといこか」と言って4本目を加えた。さすがに異物感も圧迫感も1本よりは増えて少し苦しく思ったが我慢出来ない程ではない。4本で抜き差しを繰り返した後に2本に減らして「これも人によるけどな、気持ちええにこしたことないやんな」と内を探り、ある所を刺激する。
「ぁあっ」背をしならせシーツを握り締める。
「当たりやった?」嬉しそうに言ったアキは探り当てた前立腺の辺りを何度も優しく擦る。内側から与えられる刺激での快感を初めて味わう。アキの指の動きに合わせて腰が揺れ始める。
「気持ちええか?」
「・・ん」素直に頷く。
「そらよかった」
「アキ・・・」
「ん?」
「もう、いいよ」
「いや、まだやろ」
「大丈夫」
「初めてやのに分かれへんやろ?」
「・・じゃあ、アキのを触らせて」
「そない気ぃ使わんでもええて」
「違うよ。だって、まだ見た事もないし」
「それはそうやな」と言うとソウの中から指を引き抜く。体を起こし、アキの方へ向いたソウの前で胡座をかく。風呂から上がってタオルを巻き付けただけの格好なので、裸も同然だ。そしてそのタオルは勃起した男根に押し上げてられている。その様子からもそれが結構な大きさである事は見てとれたが、アキが腰のタオルを取ってしまい実際に見てみると予想以上だった。
「反則じゃないか?」自分の物よりも余裕で一回りは太いし長いモノが天を向いて反り勃っていた。同じ男としては何やら負けたような気分になる。
「何やねん。反則て」アキが笑う。
「そう言いたくもなるよ」と言いながらマジマジと見つめる。しかし、そのご立派としか言い様がないアキの男根を勃たせているのは自分なのだと思うと胸がドキドキしてきた。
「触ってもいいか?」
「確認なんかせんでええ。ソウのモンや」ゆっくりと手を伸ばしてアキの男根に触れる。自分以外の男性噐に触れるのは初めてだが、扱い方は変わらない。自慰をする時と同じ様に手を上下させ、アキの雄を扱き始める。
「っ・・上手いやん。いつも自分のこんな風にしてるんや」ソウの髪を優しく撫でるアキの表情に色が混じる。
アキが自分の手で感じている、そう思うと自分の体も熱くなって来た。
「気持ち、いい?」言いながらアキの顔を見上げると唇を啄まれた。
「気持ちええ。最高や」うっとりして言われるともっと気持ち良くなって欲しいと思った。両方の手指を使ってアキを絶頂へと導こうとする。体を後ろへ倒したアキに自分の体を跨ぐように言われ、腹の上を跨いで膝立ちになる。
「ちゃうちゃう、向きが逆や」と言うと自分の方へ尻を向けさせ、ぐい、とソウの腰を掴んで4つ這いにさせて69の体勢を取らせた。
「ええよ。続けて?」ソウが再びアキの雄を扱き始めると、アキもソウの雄を弄り始めた。
「ふ・・ええ眺めや」目の前で揺れるソウの尻を撫で回す。腿を掴んで左右に大きく広げさせるときゅっと搾まった蕾の様な孔を晒させ、指を2本入れると前立腺を刺激してやる。
「ゃあっ」思わず手の中のアキの男根をぎゅうっと握り締める。アキが息を詰めた。
「っ、こら、そない強う握ったら折れてまうやん」
「でもアキが」
「俺が?何や」指で内を掻き回すとソウが顎を反らせた。
「アキが・・指、入れるから」
「指入れただけでそない感じたんかいな。ヤらしい体やなぁ」指を3本に増やして抜き差しを始める。
「ちっ違っ・・ん、ぁあっ」湿った音を立てながら出入りする指に合わせて腰を揺らす。
「スゴい締め付けてくるで?もっと欲しいんか?」ブルブルと頭を振るが、アキが指の動きを止めるとねだる様に尻を突き出す。ゴクリとアキが生唾を飲む。指を飲み込んでいる入り口の周りを舌で舐めるときゅう、と中の指を締め付けられた。
「ホンマに、イヤらしいコや。初めてやのにこないに欲しがって」4本に増やした指で内壁を擦り、掻き回す。
「やっやだぁっ・・アキ、アキっ」アキの男根を扱く余裕もなく、ただ縋る様に握りしめてしまう。
「アカンやん。手、お留守になってるで?」言われて思い出したように手を動かし始めるが、アキが指を動かすとまた止まってしまう。
「もう、やめて」
「ええんか?やめてしもて」
「って、じゃないとアキの触れないっ」
「・・・」手首から回転させてグリグリと内側の解れ具合を確かめ、指を抜いた。ソウの向きを変えさせ、自分の腹の上に座らせる。見下ろして来る潤んだ瞳を見つめ、今まで自分の雄を握っていた手を取り掌や甲を優しく撫でながら言う。
「ソウの中に入ってもええか?」ソウを気遣う優しい声音と表情。嫌がったり、不安な素振りを少しでも見せれば当たり前の事の様に”それ”を抑え込んでしまうだろう。だがしかし、ソウを見上げるアキの瞳には隠しきれない欲情と飢えがあった。
迷いなく頷く。アキを満たしてあげたいと思った。
起き上がったアキに押し倒される。いきり勃った男根の先端を入り口にあてがうとソウのモノを扱いてやりながら、ゆっくりと腰を押し進める。
「っは・・」指とは比べ物にならない質量に、反射的に逃げようとする腰を掴む。苦しそうに眉間に皺を寄せ、それでもアキを受け入れようとしているソウの唇を優しく吸う。
「アキ、気持ちいい?」アキの頬に手を添えたソウが聞く。
「ええよ?すぐにイッてしまいそうなくらいや」答えたアキはもう1度唇を重ね、今度は舌を入れた。キスをしながらじわじわと根元まで挿れてしまう。暫くそのままでいた後、「動くで?」と言ったアキがゆっくりと腰を動かし始める。
「ああっ」太い肉の棒が内壁を擦りながら出入りする。ある程度解されているとはいえ、その圧迫感にすぐに慣れられるものではない。苦しそうに身を捩らせるソウに快感を与えるべく、先端が前立腺に当たるよう角度を変える。指よりも太いモノで刺激され、ビクッと反応を返す。何度か繰り返して刺激してやると、ソウ自身も聞いたことのない甘い喘ぎが洩れ始める。
「ソウの中、吸い付いてきて離してくれん」欲情に掠れた声で囁いたアキが前立腺の更に奥、精嚢の裏辺りを抉る。
「ひぁっ・・やあっ」大きく背を反らせたソウの肉茎の先端からトロリと白濁が溢れ出す。
「ココも感じるんや」下唇を舐めたアキがそこを責め始めた。普通の時よりも強い射精感がソウを襲い、トロトロと流れる様に精を吐く。所謂トコロテンというやつだ。
「やだっっ」
「ホンマに?気持ちようないか?」
「ああっ、いいっけど・・・」
「ほなええやん」ソウの体を反転させ、4つ這いにさせると後ろから責め立てる。
「ぃやあっ・・おかしくなるっ」
「なったらええ。もっと見せてや。ソウのヤらしいとこ」耳元で囁かれるアキの声に誘われた様に喘ぎ、痴態を晒す。激しくなっていく責めの中で、何度も精を吐き出さされた。しかしアキは一向に達する様子がなく、涙を滲ませ口端から唾液を垂らしたソウが「もぉゆるしてっ」と懇願して言ったのを聞いた後漸く達した。大きく脈打った男根からソウの中へ精が注がれる。ぐったりとベッドに倒れ込むソウの背中に口付け、自身をソウの中から引き抜いた。受け止めきれない精が溢れてくる。
「ごめんな。ソウがあんまりにも可愛いからずっと見てたなってん」乱れた髪を優しく撫でる。ソウは緩く頭を振って微笑んだ。
「こんなに、満たされた気持ちになったの初めてだ・・。アキと1つになれて、嬉しい」呼吸を整えながらソウが言った。
「アカンて。そんなん言われたらまたしたなる」苦笑したアキはソウの額に口付ける。
「いいよ。アキがしたいなら」
「アカン。初めてやのにそない無理させられへん」言いながらソウを抱き上げ、浴室へ連れていく。
しかし、中に放った精を掻き出してやっている時にソウが反応してしまい浴室でももう1戦交え、寝室に戻って眠ろうとしたのだが、お休みのキスから再び互いの体が熱くなって更にもう1戦交える事となり、意識を手放したソウを抱き締めてアキが眠りに落ちたのは明け方近くだった。
目が覚めたのは10時前、2人とも完全に遅刻である。おまけに初体験なのに頑張り過ぎたせいかソウは足腰が立たず、結局1日休むことになった。
「ごめんな、無理させてしもて」カウチに横たわるソウに申し訳なさそうに言ったアキに微笑みかける。
「アキのせいじゃないって。俺も欲しかったんだから」
「せやけど、調子悪なるまではアカン。とにかく今日は何もせんで」と誓いを立てるアキを少し眉根を寄せて見つめる。
「・・・キスも?」
「せやな。せん方がええな」
「ケチ」キスしたらそれ以上欲しくなる可能性大だからアキがそう言うのも分かるが、それでも全く何も出来ないのは例え1日だけだとしても寂しい。
「何やケチて」ペチ、と額を軽く叩かれる。
「休む時はきっちり休まなアカン」
「分かってるよ」口を尖らせるソウの頭をヨシヨシと撫で、ニヤリと笑う。
「もっと欲しなるんはおさまったか?」
「それは・・・」頬が赤くなる。
アキと1つになりたいから、アキを感じたいからだと思っていた欲求はアキと1つに交わった後でも結局の所変わりはない。どうしたってアキを求める欲はおさまりそうにないのだと分かった。
「キスしてくれたら教える」
「ズルい子やなあ」苦笑するアキ。しかし愛しくてたまらないこの年上の恋人におねだりされると何でもしてやりたくなる。顔を近付けて甘い声で言い聞かせる様に言った。
「舌入れたらアカンで?」優しく触れるだけのキスをする。うっとりと目を閉じたソウはやはりもっとして欲しくなり、唇を離したアキを潤んだ瞳で見つめる。
「ホンマ、ズルいで反則やわ」ため息を吐いたアキは再び唇を合わせ、今度はソウの望むままに舌を這わせ絡ませ合った。
こんなに好きになるなんて思わなかった。もうアキ以外の人をこんな風に想う事は出来ない。アキじゃないと嫌だ。
縋りつくようにアキの背中に手を回す。
「アキ・・。ずっと一緒に居たいよ」
「俺もや。離さへんて言うたやろ?」ぎゅっと抱き締められる。
「うん」
「逃げたら繋ぐて言うたやろ?」首筋に口付けられる。
「うん」顔を上げたアキが笑う。
「そない簡単にうん言うたら繋がれたいんかと思うで?」
「それは違う。けど、アキと離れるよりは、どんな形でも一緒に居られる方がいいから」
「そないに思てくれてるんや。幸せモンやなぁ俺は」うっとりと言ったアキが唇を啄む。ソウも同じように返す。やがてそれは濃厚な口付けへと変わり、2人を甘い濃密な交わりへと誘った。
おしまい