「運命の人や!あの人しか居らん!」
アキとツカサが知り合って1年程たったある日、友人が数人集まった際にアキの口から出た言葉がそれだった。
「何だよ運命の人って」
「今まで何人も泣かせてきてよく言うよ」と他の友人は笑ったが、幼稚園からの想い人がいるツカサにはアキの気持ちがよく分かった。
「あると思うぜ。そういうの」
「ツカサ、話分かるやん。お前はええヤツや」賛同者を得て嬉しそうなアキはツカサの手を握る。
「で?どんな人?アキってどっちもOKだったよな」
「そんなん過去の話や。もう俺はあの人としか恋愛もセックスも出来へん」キッパリと断言したアキは想い人の顔を思い出してニヤけながら言った。
「笑顔が最高のべっぴんさんや」
「へえ」その時は他の友人達の違う話題に巻き込まれ、ツカサはその相手の事をそれ以上は聞けなかった。
それが自分の従兄弟だと知ったのは数ヵ月後で、2人で食事に出掛けていた時だった。
「そういや、あの運命の人ってどーなってんの?」
「名前くらいしか分からん。家も引っ越してもたらしいし」
「え。じゃあ探すの大変じゃん」
「けど、写真あるからな。皆に見せて回ったら誰か知っとるヤツ居るやろ」テーブルの上の携帯電話を指で叩く。
「それよかネットのが早くね?」
「アホか。どこの誰が見よるかも分からん所へ晒せるか」
「あー。そう来るか。まあ確かに俺もそれは嫌だな」
「やろ?」
「で、俺にも見せてくれるんだろ?」
「当たり前やん。その代わり協力してや?」と言いながら携帯電話を操作して表示させたその写真はツカサに大声を上げさせる程驚愕させた。
「っえええええー!?」周囲が何事かと視線を向けてくる。
「何や。あまりのべっぴんさんぶりに驚いたんかいな」
「・・いや・・世間て狭いっていうか。いいか、アキ。これ言ったら俺より驚くぞ?」
「何の事や?」ツカサの言わんとする所が読めない。
「イトコ」
「は?」
「だから、俺のイトコなの」
「誰が」
「この写真の人!ソウ兄だよ!」瞬間、勢い良く立ち上がるアキ。
「はあっ!?ホンマか?」
「こんな事で嘘ついてどうするんだよ?」言った瞬間アキに抱き締められた。
「でかした!ようやったでツカサ!」バシバシとツカサの背中を叩く。
「何もしてねえ、つか苦しいっ痛いっ」
その後しばらく有頂天になったアキに何度も背中を叩かれ、ようやく解放されたツカサはげんなりしていた。
「で?いつ会わせてくれるんや?」もうすっかり会える気でいるアキにツカサは「多分、今ムリ。ソウ兄フラれたばっかだから」と言った。
「そんなん、俺が忘れさしたるし」
「いや、ソウ兄のあの落ち込みぶりじゃあ当分抜けられないと思うぜ。それにソウ兄、女派だからな。かわいい女の子に慰められたら嬉しいかもしれないけど、男に来られてもなあ。混乱させるだけじゃねえの?」
「・・・」暫く考え込むアキ。「分かった。それやったら落ち着くまで待つ。せやけどそん時は絶対紹介してや?」
「ああ。分かってるよ」
そしてその約束はアキがソウに一目惚れしてから2年の月日が経ってから果たされる事になる。
おしまい